浅野いにお「素晴らしき世界」第2巻

最近、雨後の筍のように出現している、センスの良いポップバンド/ロックバンドのような漫画。「先人たちの偉業である名曲群の美味しいところだけを抽出して、センス良くまとめあげる編集力」だけはやたらと長けている、ポップバンド/ロックバンド達のことだ。浅野は、よしもとよしとも岡崎京子のエッセンスを掬い上げ、上手いこと短編にまとめあげている。まだ20代半ばだというのに、その手際の良さはなかなか大したものだ。
残念ながら、音楽界と比較すれば、今の漫画界には浅野いにおのような高い編集力とセンスの良さを兼ね備えている人材は非常に稀である。したがい、浅野いにおの存在は、確かに今の漫画界では高く評価されるべきなのだろうと思う。私も、それに反対はしない。
だが、私はどうにも、安易にヒューマニズムに走ってしまうオチにムカついてしまうのだ。
よしもとよしともも、岡崎京子も、決して安易なヒューマニズムに走ることはなかった。そんな安易な道に逃げられるほど、彼らが抱えている闇や絶望というものは、浅いものではなかった。絵柄自体はさっぱりしているものの、その内に抱えているものは花輪和一の絵柄のように、ドロドロとしたものであった。
個人的な願望としては、遠藤浩輝のデビュー作「きっとかわいい女の子だから」に拮抗できるほど、ギスギスした、尖った刃物のような作品を書いて欲しいものだ。まだ若いのに、なに物分かりのいい作品を作ってるんだヨォって、からみたくなってしまうのだ。