映画「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」

この映画ってちらちらとTV放映を観た限りでは余り良いイメージを持っていなかった。何つうか胡散臭ぇ、って思ってたのだ。ハーバード大学出身のお坊ちゃんが何故に低所得者層を喜々として演じ、なおかつハーバード大出身者をバカにする映画を撮ってるんだ?気取ってんじゃねぇよ!と思ってました。今回、初めて通して観てみて、まぁそういう部分も多々あるけれど、十二分に鑑賞に耐えうる面白い映画だな、と自らの偏見を改めるに至りました。

「8Miles」も「グッド・ウィル〜」も、プライドの映画である。低所得者層のプライドを体現しているのが「8Miles」であるとしたら、「グッド・ウィル〜」はやはり、中産階級以上の、「お坊ちゃん・お嬢ちゃん」のプライドを体現した映画であると思う。

結局、根っこのところはどちらも同じではあるのだけれど。「8Miles」でラビッドも、「グッド・ウィル〜」のウィルも、最初は虚勢を張っているところ、しかし最終的には弱い自分を認め、本当の幸福を掴むために一歩前へ進んでいくところも含め、両者はその物語性・テーマ性が案外似ている。本当は才能があるのに、それを存分に生かし切れないで燻っているところもそっくりだ。

だけど、低所得者層のリアリティはやっぱり「8Miles」にあるんだなぁ。家賃滞納で追い出されそうになっているエミネム&キム母さんと、良い就職口を斡旋してくれてるのにゴタゴタ言って逃げようとするウィルとでは、やっぱり「恵まれ度合い」が違い過ぎている。後、ラストシーンでウィルは仕事より女のケツを追っかけるのを選ぶけど、エミネムは仕事を優先するんだよな。生活を維持するため、家庭を養うため、そして自分の夢を実現させるための貯金のため。ウィルは、友達に買ってもらった車で折角就職の斡旋をしてくれた教授の礼にも報いず女のケツを追っかける方を選ぶんだよな。ちょっと見た感じでは感動的っぽいラストだけど、ウィルが余りに無軌道かつドリーミー過ぎる点は否めない。こういうラストを選択してしまうところに、「お坊ちゃん性&リアリティのなさ」が窺えてしまう。そこが残念だなぁ。

児童虐待ネタ」&「低所得層出身コンプレックス」を抜いて、中産階級に産まれたごく普通の男の子、って設定でいっても良かったと思うのだけど、それだとハリウッド映画にはしにくいのかもしれない。まぁそんなドラマチックではないけれど、だからこそリアリティを持つ、と俺は思うのだが。「低所得者層」をダシにして、ハーバード大のお坊っちゃまたちがちょっと夢見がちな映画を作ってみました、的な側面は否めないもんなぁ。

まぁそれでも、やっぱり面白い映画だよ。脚本は非常によく練られているし、ショーン先生の「君のせいじゃない」と続けてウィルに言う場面も、非常に納得のゆくシーンで、なおかつ少し泣けました。ショーン@ロビン・ウィリアムズも名演だったと思う。だけど、やっぱり「8Miles」には及ばないかも。そう考えると、案外「8Miles」って面白い映画だった、という結論になり、自分でもビックリしてしまうのだが。俺、確か内容薄い映画、とか書いてなかったっけ?