MONSTER CHAPTER12「ささやかな実験」

ドクターテンマの行動が行き当たりばったり過ぎる。それでも何となく手がかりを発見して、何となく話が展開してしまうのは、物語だからと言ってしまえば身も蓋もないのだが。

後、なんかヨハンが「怖い人物」として描かれすぎてしまっているために、ちっとも怖くなくなっている。「教唆殺人」というネタは「CURE」と同じものでだけど、間宮邦彦の方が∞倍怖かったよな。「CURE」という映画は、人間が「誰でも」(←ココ大事)持つ暗部を炙り出すことで恐怖が演出されていた。勿論、「MONSTER」でも似たような事をやろうとしているのは分かるのだけれど、ずいぶんと腰が引けてしまっているものだから、どうにもこうにも中途半端で、締まりがなくなってしまっている。第一、ハルトマンのおっさんは何でディータに対して「帰って来てくれ」と哀願したんだろう。あのオッサンが次から次へと養子を貰っていたのは、「新たなヨハン」を発見・育成するためじゃなかったのか? なら、「ディータ、ダメぽ。使えねー→殺しちゃうか☆」って流れにするのが自然ではなかろうか。そこを、「帰ってくれー」と哀願してしまう場面にするところが、この作品の甘っちょろいところだと思う。「明日はきっといい日だ」というドクター・テンマのセリフといい、それをあっさりと信じてしまうディータといい、作品が目指そうとしている方向性と、作家の資質(おそらくは原作者、浦沢直樹の)が異なりすぎるため、どうもちぐはぐなことになってしまっている。うーん、やっぱり何でこの作品がこんなに評価が高いのか分からないなー。今のところでは、みんな騙されているとしか思えない。