キューティー・ブロンド

いやぁ、面白い!! 観る前はファレリー兄弟のような「アメリカ製おバカ映画」かと思ったら、とんでもない、「女性の自立」に真っ向から取り組んだシリアスな作品であった。

男のケツを追っかけてハーバード法大学へ進学する「恋愛ストーカー」=エル・ウッズが、学習・仕事を通して自我に目覚めていく過程の描き方が実に見事。映画前半におけるエルの恋愛ジャンキーな行動と、派手派手ピンクな衣装があるからこそ、中盤から後半にかけて彼女が法廷で活躍するシーンは一層観客の心を沸き立たせてくれる。だが、大事なのはこれは単なるよくある「成長物語」ではないということだ。誰とでもすぐ仲良くなる性格や、目的に向かって突き進んでいくハングリー精神も、それにあの派手派手ピンクなスタイルも、冒頭から彼女がすでに持っていたものである。仕事を通して彼女に起こった変化は、わずか2点に過ぎない。1つは、「恋愛ジャンキー」から「仕事ジャンキー」になったこと。もう1つは、「人を見抜く力」に一段と磨きをかけたことだ。(物語冒頭での店員とのやり取りで、エル・ウッズが人を見抜く優れた資質を持っていることが示されている。だが、映画前半ではエル・ウッズはガール・フレンドのことを「Pooh Bear(クマのプーさん)」と軽々しく呼んでしまえるような男の内面性には気付いていなかった)

また、途中までコンプレックスが主人公の原動力となっていた点も興味深い。エレベーターの鏡面に映る自分のブロンド・ヘアーを悲しそうな顔でじっと見つめているエル・ウッドの姿は、本作品のテーマを象徴している。ブロンドの髪が住む世界(「オシャレ」「セックス」)は、ブルネットの髪が住む世界(「インテリ」「法律」)とは完全に切り離されているいう現実の一面を、エル・ウッドは教授のセクハラによって思い知るのである。

それでも、エル・ウッドは自分の持っていた世界観を崩そうとしなかった。エル・ウッドが自分の得意な分野(「ブランド」や「髪の手入れ」)を用いて、裁判の場でどんどんと活躍を果たしていく。だからこそ、そんなエル・ウッドの姿に女性は共感し、憧れを抱くのであろう。

ほとんど期待していなかったので、これは大きな収穫であった。勧めてくれたO部さんに感謝しなければ。あー、でも裁判のシーンはちょっと安易過ぎるところもあったのがいただけないなー。

「あなたのボーイ・フレンドは?」
「チャックです」

弁護側は早口で次から次へと質問を繰り返し、最後に1つだけこの質問を証言者にぶつけた。そして、証言者であるプール監視員は思わず口を滑らし、自分がゲイであることをバラしてしまうという場面が上記のセリフにあたる。でもさ、これって「誘導尋問」だろ? マズいんじゃねーのか?

また、最後の「パーマをかけた後にシャワー云々」の部分でも、あんなあっさりとホシが自分の有罪を告白するかなー、などとも思いました。原作者のアマンダ・ブラウンって現職が弁護士の人なはずだから、ひょっとするとこちらが思い違いしているだけかもしれないけど、まー、でも、もうちょっと説得力のあるシーンを描いて欲しかったなー。

ま、でも面白かったので大満足です。「キューティー・ブロンド ハッピーMAX」も、勿論観るつもりです。