フランケンシュタイン('93)

一体どんな「フランケンシュタイン」が姿を現してくれるのだろうと期待していたら、まんまいつものデニーロだったので少し拍子抜け。上半身裸のケネス・ブラナーと全身真っ裸のロバート・デニーロがヌメヌメの液体に全身を濡らしながら抱き合うシーンは、そっち方面がお好きな人には堪らないシーンかもしれない。私はちょっと苦痛だったが。

原作を改変しまくりと聞いていた「フランケンシュタイン」('31)が意外と原作に忠実であったのと同様に、原作に忠実だと聞いていた「フランケンシュタイン」('93)は意外に原作をかなり改変していた内容であった。流行病によって人々がヒステリー状態に陥っているという設定や、人造人間を作り出す具体的な方法(中国の鍼療法や、電気ウナギを用いるところなどが面白い)などが描かれていたのは面白かった。しかし、前者に関しては、せっかくの活かしどころであるジャスティンの死刑シーンが余りにもあっさりと描きすぎてしまっているために、少し勿体ないことになってしまっている。あの場面をたっぷりと描くことで、群衆の持つ冷酷さが浮き彫りになるはずであったのに。

また、ラストシーンで恋人のエリザベスが女人造人間になる下りは、私としてはかなり意表を突かれた思いがした。この場面は上手い。エリザベスを殺害した後グダグダと追跡を描くより、ここで大きな事件を起こした方がラストの締めに繋がりやすい。それに、ヘレナ・ボナム・カーターの不気味なメイキャップも拝めたしな。最初、貞淑な女性であるべきエリザベスをヘレナ・ボナム・カーターが演じるのに少し違和感があった。原作の役柄とは異なる気の強い女性として描かれているし、また笑い声が大阪女みたいにドスが利いていて、ヒロインとしてはいかがなものかと思って観ていたら、ラストにこんな素敵なシーンを用意していたのだ。うーん、本作におけるエリザベスはこういう役であったのか。それならば、芸達者であるヘレナはうってつけのキャスティングと言えよう。日本で言えば、管野美穂みたいな?

うーん、面白かったけれど、ちょっと駆け足で描きすぎている感は否めないなぁ。脚本にフランク・ダラボンの名前が連ねられているのを見て、少し納得したけれど。フランク・ダラボンって脚本が実に見事なのだけれど、作風的に3時間近くのものでないと、彼の持ち味がきちんと活きてこないのだよな。3時間近くの作品にしていたとしたら、もっともっと面白い作品になれたかもしれない。