レッド・ドラゴン

猟期サイコサスペンスのふりをして、実は「純愛もの」のストーリー、ラスト10分で大どんでん返しが起こる構成に関しては、シリーズを通して一貫している。今回の話ではクラリスがいない分、犯人と盲目の女性のラブストーリーにくっきりと焦点があたっていて、余計に「ラブストーリー」の要素が高かったように思う。

それにしても豪華な出演者陣である。犯人役のレイフ・ファインズケビン・コスナーの位置に行けるほどの「美男子」でありながら、本作品では「醜い男」をわざわざ演じているのが面白い。エミリー・ワトソンも「奇跡の海」を彷彿とさせるようなひたむきで不器用な女性を生き生きと演じていた。フィリップ・シーモア・ホフマンは今回も美味しかった。パンツ一丁で椅子に張り付けにされている図など、その手の趣味の人にはたまらないご馳走であっただろう。また似合うんだよなシーモア・ホフマンは、こういうマヌケな画が。

オフィシャル・ホームページで日本での記者会見やプレミア上映のシーンを見たのだが、エドワード・ノートンが日本語を交えてにこやかに人々の前に顔を出したのは意外であった。プレスでは、ノートンが「レッド・ドラゴン」の撮影は契約上で無理矢理出演を決定させられたために余り演技に身が入っていなかったとか、撮影時に監督をたびたび罵声を浴びせていただとか、そういった悪い噂が入ってきていたが、舞台上での彼は監督のブレット・ラトナーと仲良くやっているようであった。ま、契約上のトラブルがあったのは事実だろうし、撮影中でも険悪的なムードになったことも事実なのだろうけれど、こうしてプロらしくプロとしての仕事はきちんとこなしているところから見て、決して売れたが故の傲慢をカマした訳ではなく、ノートンにとってみれば「筋を通した」というだけのことだったのだろうと推測できるのである。

まぁ言うべきことはちゃんと言っていたけどね。「ブレットはシリーズ中最高傑作ト言テマス。デモソレは夢デス。「ハンニバル」ヨリハイイケド、「羊タチノ沈黙」ニハマケマス」「アンソニーはドンナニギャラをツマレテモ二度トレクターはヤラナイ言テマシタ」
また、記者会見でブレットが役者を扱うのに難儀したことをこぼしていたことも印象的であった。レイフ・ファインズエドワード・ノートンレベルの人たちに対して、まるでクリス・タッカージャッキー・チェンのように話しかけてしまって、彼らの気分を害したかもしれない、という内容の事を言っていた。「〜レベル」って、そりゃクリスとジャッキーに失礼だろー、って気もするが、やっぱりハリウッドの役者はプライドが高く、30代そこそこの監督に対しては「下っ端」くらいにしか思ってないのかもしれないなぁ。