機動戦士ガンダムSEED PHASE09〜PHASE12

軍上層部の余りのバカさ加減&何も考えてなさ加減から、「トンデモアニメ」と一般には思われてしまっているけれど、その点さえ目をつぶれば(かなり大きなつぶり方ではあるけれど)非常に良い作品だと思う。特にキラと友人関係の描き方が素晴らしい。お互い信頼し合っていそうで、実は友人たちの方ではコーディネーターであるがゆえに、キラに距離感を感じている、といった匙加減が絶妙である。
これがトミノアニメであったら、登場人物同士がガチンコでぶつかりあうところだが、そういう分かりやすい対決はしない。半ば無意識に相手を傷つけて(もしくは相手を傷つけていることに気付かないふりをして)いるところが、キラ友人たちのズルいところであり、意気地なしなところであり、また非常に現代人的なところであろう。ここまで人間関係を踏み込んで描いた作品は、他にちょっと思い当たらない。

機動戦士ガンダムSEEDは基本的には「差異」と「ディスコミュニケーション」の話である。また「戦争」というものを非常にシンプルに捉えている、という意味で、珍しい作品であるとも言える。難しい専門用語や、複雑な駆け引きなどを描いて、ヘンに戦争というものを難解に見せてしまっている多くの作品より、案外こういったシンプルな作品の方が真実をついている部分も多いと思う。多いと思うのだけれど、それでもあの関俊彦声の仮面の人は本当に何も考えてない、単なる無能な男にしか見えない、というのはやっぱちょっと描き方に問題があるとは思う。

PHASE11のフレイの最後のセリフがこの作品の戦争に対する考え方を非常に端的に表していたな。

「そうよ。みんなやっつけちゃえばいいのよ。そうしなければ、戦争は終わらないんだから………」

シンプルだけど、意外と真実だよな、この言葉。