M-1グランプリ2002

実は今までM-1グランプリを一度も観たことがなかった。で、今回DVDを借りてきて初めて観ました。うーん、面白かった。準決勝まで残った敗者復活戦まで観て改めて思ったけれど、やっぱり決勝に残った8組(と敗者復活戦を勝ち上がってきた1組)って凄くレベルが高いのだなぁ。9組の漫才だけ観ていたら、お笑いも常日頃チェックしようかという邪心も起きてしまうが、敗者復活戦を観てしまうと、やっぱり全部追っかけていくのは大変なのだなぁって思う。あれだけの有象無象(と言っても準決勝まで残っているのだから、それでもかなりのレベルのはず)の中からダイヤモンドを探していくのは実に根気の要る作業だ。私にはとても真似できない。こういった番組で、まとめて情報を得る方が効率が良くていいや。

9組について、一言ずつ感想を。

ハリガネロック

ますだおかだらと同期のベテラン勢だけあって、さすがに安定しているし、勢いもある。だから観ていて面白いのだけれど、それだけって感じもする。そこがちょっとつまらないところかなぁ。ワガママだけど。

ますだおかだ

こっちも安定している。それプラス2人のキャラクターがきちんと立っているところが良い。ボケ担当なのにドンドンと相方を引っ張っていく兄貴肌のますだと、ツッコミ担当なのに時々サムいボケを挟んで相方に飽きられるおかだのコンビネーションが、非常に美しいのだ。あぁ、そう言えばたまたま「ダウンタウンDX」を観ていたら、やたらと面白い芸人がいて奇妙に記憶に残っていたのだが、この人たちだったなぁ。

ダイノジ

重箱の隅を突つくようなマニアックなネタを矢継ぎ早に繰り出して、時折観客(私とか)を置いてけぼりにしてしまうところが惜しい。ネタそのものは決して悪くないのだけれど。そう言えばたまたま観ていた「笑いの金メダル」でダイノジが出ていたのだけど、漫才のネタがかなり分かりやすかったのを思い出した。特典のダイノジのインタビューで、「フットボール・アワーさんがずいぶんベタなことをしているなぁと観ていたけれど、僕らが間違っていた。フットボール・アワーさんの方が大人だった」という発言をしていたのだけれど、ちょっと観客とペースを合わせることを覚えたのかもしれない。だけど、私が見た「ワラ金」のネタはちょっとベタ過ぎる気がしたのだけれどなぁ。ここらへんの匙加減は、凄く難しいところなのだよなぁ。

テツandトモ

談志師匠の「オマエラ何しに来た?帰っていいよ」にこちらまでビビりまくる。
その後、「俺はオマエラを褒めてるんだぜ?」と言って、少し安心したけれど。確かに、松ちゃんも言っていたけれど、彼らは所謂漫才じゃないよな。漫才という枠にはまることのない、まさに「テツandトモ」としかいいようのない独自のスタイルを産み出していると思う。そういう点ではラーメンズと似ているかもしれない。(芸風は全く違うけれど)今回も、普通に面白かったなぁ。

フットボールアワー

いやぁ、面白かった! 漫才自体は本当に古典的な正統漫才なのだけれど、話の転がし方・ズラし方の上手さは他の若手芸人とは群を抜いている。後藤が考えた緻密なネタ構成を、酔っぱらったように話すノンちゃんによって見事なボケとして昇華されている。奇跡的なコンビといっていいかもしれない。

笑い飯

たまにテレビで出ていて、いっつもつまらなそうにブスーッとしているかと思うと、時折ひょいと全く思いも寄らないような角度からボケをかましてくれる。私は笑いとは常々意外性であると考えているが、そういう意味では、彼らほど意外性に富んだ人材は現在のお笑いシーンでは全く見当たらない。この時点で、結成わずか3年目のグループだというのに。また、2人が2人ともボケでツッコミ、ってのは凄いよ。

おぎやはぎ

おぎやはぎって、つぶやきシロウみたいに「キモいところがウケているのかな」と何となく思っていた。いや、私が完全に間違えていました。ちゃんと、普通に面白い。
矢作の何か舞台上で恐ろしいことをしでかすのではないかって思ってしまう危うげな佇まいと、小木の冷静過ぎるツッコミが、いいバランスを保っていると思う。テンポが大好きな大阪人は、彼らのゆっくりとしたリズムは余り馴染まないかもしれないけれど、でもこれはこれで味があっていいと思う。松本人志と談志師匠が高得点をあげていたのは印象的だったなぁ。結果として、4位だったしな。

アメリカザリガニ

ネタ自体は面白いのだろうけれど、漫才のリズムがシャキッとしていないので、面白さがこっちに伝わってこない瞬間がしばしばある。それが残念。特典のインタビューでアメザリのインタビューがあったのだが、ツッコミがM-1に対して熱い思いを持っているのに対して、ボケがちょっと距離を置いている、という2人の温度差が気になった。2人の息が合っていないとお笑いは辛い。フットボールアワー笑い飯もおかだますだも、決勝に進出したコンビは実にピッタリと息が合っていた。おぎやはぎだって、「M-1はもういいや」っていうネガティブな意見で、2人共見事にピッタリと意見が合っていたもんなぁ。ここらへんが、9位という結果、というのは穿ち過ぎであろうか。

スピードワゴン

今回の大収穫。いやぁ、コイツら面白いわ。特典の敗者復活戦を観たけれど、もうこのコンビが群を抜いて面白かった。やさぐれながらもナイーブな一面を見せるボケの子と、小倉智明似で大袈裟なジェスチャーが特徴のツッコミの子のコンビネーションが、これも実にナイス。今回のネタも、コンディションも、彼らのベストではないことが伝わってきたが、それでも充分に面白かった。

まぁ最終的に勝利したのはますだおかだだったのだけれど、これはまぁ順当でしょうね。ここでフットボール・アワーが勝利したらお笑いファン的には盛り上がったのかもしれないけれど、やっぱり私も島田神介同様、心情的にますだおかだに取らせてあげたかったので、この結果は良かったと思う。結局、フットは2003年にグランプリを獲得するしね。

※敗者復活戦

うーん、45組全部観るのはやっぱりしんどかった。決勝に進出したグループとは、やっぱり大きな違いがあるなぁ、と思う。一つのネタを長々と引っ張りすぎている漫才が多いのが気になったなぁ。やっぱりネタはパッパッと寿司を握るように素早く見せていかなきゃ。

その中で群を抜いていたのは、やっぱり決勝に進出したスピードワゴン。(スピードワゴンが敗者復活戦を勝ち抜いたのを我が事のように喜んでいたのはおぎやはぎ。コイツら、いい奴だなぁ)

他にはOVERDRIVEが良かったかな。品川庄二も二丁拳銃も面白いのだけれど、アニメや漫画ネタをするのが良くないよなぁ。「ウケを狙いやすい」のは分かるのだけれど、でもそれって実は「観客層を狭めている」ことでもあるんだよな。あー、そう言えばスピードワゴンもそれで失敗しましたね。別に「戦隊モノ」に拘らなくても、彼らならどんなネタでも面白く転がせるはずだから、別のネタを選択すべきだったかもしれないなぁ。