サムライチャンプルー 第11話「堕落天使」

MADLAXに引き続き、ベッタベタでセンチメンタルな昼メロ話。だが、きちんと世界観が作り込まれていて、演出もしっかりしているため、MADLAXなんかとは比較にならないくらいに面白く観ることができた。カブトムシを用いた賭事とか、縁切り寺を出してくるあたり、時代考証を無視して奔放な世界観を作っているように見せかけながら、きちんと押さえるべき設定は押さえている。

江戸時代というのは、今からだと想像のつかないくらいに閉鎖的で、不自由な時代であった。本作品の素晴らしいところは、それをきちんと理解していて、その上で、不自由な自らの状況から抜け出そうとする人々を、あくまで庶民の視点から描いているところにある。今回のジンとシノさんのベタベタな色恋話も、ベタであるがゆえに非常にリアリティがあり、グッとくる。そこが、地に足の全く着いていない絵空事を語っているだけのMADLAXとの、大きな相違点である。

前半のうなぎをおろす描写など、細かな設定の積み重ねが実に素晴らしい。こういう一つ一つの設定を疎かにしていないからこそ、ただの「色恋話」が非常に大きな説得力を持ってくるのだ。何も変わったことをする必要はない、当たり前の話をきちんとすればいいのだ、という事実をまさかサムライチャンプルーで教えて貰えるとは思わなかった。イメージ的には、「ちょっとオシャレで変わったアニメを作ってみました」という一連のアニメ作品の代表格のように思われているだろうからなぁ。(私も観る前はそう思っていたし)