新選組! 第36回「対決見廻組!」

前回に引き続き、今回も捨助vs新選組の追っかけ合い。それを導入部として、新選組と見廻組が鉢合わせをする場面が導かれ、両者の対立が視聴者に示される。物語の運びの上で、捨助は相変わらず重要な役目を負っている。

新選組」は、「人斬り集団」という認識が一部にあるようだ。しかし、どちらかというと「警察」や「自衛隊」に近いものであったように思う。「京都で狼藉を働く不逞浪士を取り締まる」事が主な仕事であり、また、今回のように災害時には出動して市民を安全から守る役割をも果たしていたのであろう。本作品で象徴的に語られているように、新選組とは「火を消す」のが仕事であったのだ。

それに対して、「どうせ日本中は火事になる」と説き、「それならば火の粉が降りしきる中で暴れてみせよう」とするのが坂本龍馬の論理なのであろう。つまり、坂本龍馬、そして長州・薩摩が負う役割とは「火を焚きつける」であるという事を示したいのであろう。

「火事」の発生を新選組・見廻組の結束を強めることとなったきっかけとして描くだけでなく、両者の性質の違いがくっきりと現すための象徴的表現としても用いている。地味ながらも、三谷幸喜の筆は今回も冴えている。

物語前半〜中盤にかけて、新選組がかつての地縁・血縁で結ばれた仲良し集団ではなく、ドライで現代的な「組織集団」へと変貌しつつあり、その事に対して試衛館メンバー(沖田総司井上源三郎)が戸惑いを感じているところが描かれる。また、物語中盤に、伊東甲子太郎に「内側に入ってみると、新選組はバラバラだ」とも評されてしまう。
こういった経過があるからこそ、後半、火事が発生した時の近藤勇の見事な采配と、それに迅速に応えることのできるしっかりと整った指揮系統が際立って見えるのである。ずいぶんと頼りないところばかり見せてきたリーダー近藤勇香取慎吾であったが、今回の話では久しぶりにリーダーらしい貫禄と決断力を見せてくれた。(今回は、土方ではなく自分の判断で「鴨川に架かる3つの橋を抑える」事を決めたのも良かった)

後、浅野薫@中村俊太は今回も他人(武田観柳斎)の悪口をブーたれている割には、すぐ横で起こっている喧嘩を止めにも入らず、ただぼんやりと眺めているだけのヘタレぶりを見せつけてくれた。なんか微妙なキャラクターになっているよなぁ、浅野薫。