BECK LIVE−12 シークレットライブ

原作の面白さに拠るところが大きいとは思うが、なかなか面白かった。「BECK」を映像化できるとしたら、やっぱり小林治しかいないよなー。「きまぐれオレンジロード」の頃、すでにオープニングシーンにMTVを意識した映像を取り入れていた氏であるだけに、ロックバンドのライブの熱気を実に自然に表現できていたと思う。

あー、それと「BECK」に対しては割とあちこちのBLOGで「実写映画のよう」という意見を目にしますが、私はどちらかというと「原作マンガに忠実」ということなのだと思う。

美術が非常に特徴的で面白い。屋上から見下ろす風景を丹念に描いた描写があったと思ったら、オーソドックスにあっさりと描いた背景もある。かと思えば、実写からの写真をそのまま取り込んだ背景もあるし、またそれを加工したと思われる背景もある。背景って、作品の世界観に統一感を持たせるためにある程度統一が行われるものなのだが、この作品に限っては全くレベルの異なる背景がいくつも登場する。と言うか、この「バラバラさ」こそ「BECK」という作品が持つ世界観ということなのであろう。

また、このところますますアニメのテンポが高速化していく傾向にある中、本作品ではかなり意識的にテンポをゆっくりと進めている。セリフとセリフの間に充分な時間をとっているため、ただの何気ない会話に余韻が生まれる。この余韻が「切なさ」となってきちんと観客の胸に伝わってくる。この演出は、別段特別なものでも何でもなく、映画ではいくらでも見かける手法である。(「手法」という言い方すらバカバカしくなるほど、実写映画では自然に行われている)だが、アニメではかなり意識的に行わないと、この余韻は生まれてこない。

また今ではもはや「古典」となった感のあるフェードイン・フェードアウトの手法をとっていて、ビックリしてしまった。映画では今でもたまに見かけるものの、アニメではほとんど見られない手法だ。(しかも別に「夢から覚めた」とかいった象徴的な用い方ではなく、ごく普通に場面の切り替えに用いられていた)

小林治はかなり確信犯的にこういった演出をしている。だが、これはやはり実写のテンポではなく、「我々がマンガを読むテンポ」に近いものではないかと思う。「背景のレベルが統一されていないこと」も、「原作マンガの再現」という演出意図の一環ではなかろうか。

ではどのへんが「マンガ的」なのか、というのは、もう少し続きを観ていって判断する必要がありそうである。続きが楽しみな作品だ。