家なき子 第1話〜第3話[anime]

楠葉宏三版も名作なのだけれど、これは出崎統版。

改めて見てもやっぱり名作だなぁ。立体アニメーションを謳っていることがあって、背景も前景も動かしまくりで、それが今見るとヘンで面白かったりするんだけれど。落ち葉飛び散り過ぎだって!!とか、火の粉飛び散り過ぎだって!!とか、後ろの雲、速く動きすぎだから!!とか、もう何かいろいろ動かしまくっているので、ついつい落ち着かなくってツッコミたくなってしまう。

だけれど、まぁそんなことは些細なことで、この作品の本当の価値はドラマ性の高さにあるのである。各キャラクターの複雑な心の動きを、実に見事に表現している。
脚を怪我してしまい心がすさみながら、それでもレミを旅芸人に売ってしまうバルブランの苦悩の描き方も上手い。直接描かれてはいないものの、苦汁を飲まされてきた男の何年かが観客にもきちんと透けて見えることができ、「同情すべきキャラクター」ということがきちんと子供にも伝わってくるように描いている。これ、下手な人が描いたら単なる「悪役」として描いてしまうところだ。青野武の名演もさることながら、出崎統の演出があったからこそ、ここまで深みのあるキャラクターとして成立しているのだろう。

バルブラン夫人もいい。ただ単にレミを溺愛しているだけではなく、レミをきちんと1人の人間として認めているところがいい。(レミが母親に甘えて寄っかかろうとするところを、夫人はそっと身を引き離し、「さ、雪かきしましょ」と持ちかける。このあたりの距離感の出し方は本当に上手い)

また、父親と旅芸人が話している間もレミはじっと待っていたし、旅芸人が家にやって来た時もレミは大人しく旅芸人に手を引かれて行ってしまうが、この場面も「何故?逃げればいいじゃん?」と観客に思わせることはない。レミが自分の家の家計が苦しいことをきちんと悟り、自分の運命を甘受していることが分かるのだ。とは言っても、何もかも分かってクールに対処するのではなく、ホントは母親と離れたくない、だけど無力な自分は連れて行かれるしかない、という「甘受」の仕方なのだ。このあたりの匙加減も上手い。

うーん、改めて見てみると、本当に面白いし、上手い作品だよなぁ。出崎統&杉野昭雄コンビはついつい濃ゆい作画とけれん味たっぷりの止め絵演出ばかりが目についてしまうけれど、やっぱりそれだけではここまで有名にならないし、現在までサヴァイヴしていないよな。彼がサヴァイヴしてこれたのは、ただ単純に優れた演出家だからなのだろう。