けいおん! 第11話「ピンチ!」

第10話の次回予告を見て、「ピンチ」なのは唯のギターのメンテナンスに時間がかかり、文化祭に間に合わないかもしれないことかと思っていた。
しかし実際は、律と澪が些細なことから仲違いをしてしまい、律が部活動に顔を見せなくなり、このまま軽音楽部として文化祭に参加できるか否か、が「ピンチ」の内容だった。
(結局、律が部活に来なかったのは「風邪を引いたから」が理由だったのだが)

このままゆるゆるなモードで続いていくのかと思っていたので、まさかのシリアス展開にちょっとビックリした。また、シリアス展開に突入した際には、きちんとギアチェンジをかけて、演出の方向性を合わせてきているところにも驚いたと同時に、この作品のスタッフの抽斗の多さに、改めて感心させられた。

ギターショップから動こうとしない澪を律が無理に引っ張っていくと、澪がドンと尻餅をつく。その音が大きかったために、唯たちや他の面々も澪の方に注目する。(澪の尻もちで、これまでの物語の流れが寸断される形となるところがポイント)そのすぐ後で、澪が急に起き上がって「もういいよ!バカ律!」と澪が言い放つ。(澪がその言葉を言い放った際に、澪ではなく律のキョトンとした顔がクローズアップで抜かれている)またその後、唯が和と一緒にお茶をすると言うと、澪が自分も参加したいと言って嬉しそうにしている。澪の嬉しそうな顔が律視点のカットで抜かれ、そのすぐ後に律のバストアップが映し出され、律が少しすねている様子が抜かれる。

ここの、ゆるゆるモードからシリアスモードへギアチェンジが行われ、加速度的に緊張感が高まっていくところの描写が、実に上手い。よもや、「けいおん!」でこんなシリアスな場面が展開されるとは思っていなかったこともあり、どうなってしまうのだろう?とドキドキ手に汗を握りながら観てしまった。

律が部を休んでいたのは単なる風邪のためだと分かり、そして律も風邪が完全に治り、そのすぐ後に講堂使用届を出していなかったことが分かったが、和の仲介もあってすぐに解決された。(この時、律が和に感謝の言葉を述べて、あまつさえ「私の面倒も見てくれ!」という言葉を述べている事から、基本的に律が「甘え体質」であることが推し量られる。澪も、これだけ我侭な律に「甘え」られて、大変だろう)バンド名も(さわ子先生の独断で)決まって全ての問題が解決され、いよいよ本番に向けて頑張るぞ!となった最後の最後の場面で、唯が風邪を引いてしまったことが分かって幕を閉じるのも、絶妙に上手い。これだけのボリュームを、ここまでコンパクトにまとめて、しかもいちいち面白いというのは、それだけ作品のクオリティが高いということであろう。演出は、第5話「顧問!」でも優れた手腕を見せていた新鋭の高雄統子だ。