月詠 CHAPTER:11 「おにいさま、安静にしてなきゃダメ」

話の内容自体は「天地無用」ばりの痴話ゲンカ&ドタバタなのだが、演出と作画がやたらめっぽういいので、非常に楽しめる。

とにかく、絵コンテが巧い。やたらパースをつけたカット、ギャグ調の崩した絵、応接間を真横からまるで舞台のように切り取ったカット(所謂、「ドリフのセットのようなカット」)、相澤昌弘の美麗なキャラデザが堪能できるデザイン的カットなど実にバラエティーに富んでいる。その上、まるで実写映画の画面のような、非常に難しい角度から対象を忠実に撮ったカットが混ざる。スゲェ。スゴすぎる。内容はただのバカでラブなコメディーに過ぎないのに。

後、話がちゃんと「どうでもいいもの」として成立しているポイントも見逃せない。どれだけ演出・作画がきちんとしても、話がグダグダだったら見ていられないはずだけど、これはしっかりしている。「話」というのは、何も深いテーマ性だとか、息詰まる展開だとか、そういったことを言っているのではない。これは演出と「萌え」を見せる作品なので、別にお話はそこまで頑張らなくてもよい。ただ、物語上の視点をきちんと主役の「葉月」に合わせていればよいのだ。この作品は、それができている。そして、それができていない作品の何と多いことか。こういったヌルい萌え作品は相変わらず手堅いなぁ、金巻兼一は。